【弁護士が教える対処法】判決解説

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18 判決解説


(争点1)損害額
(原告の主張)

ア 休業損害1170万3888円
原告は専業主婦であり症状固定時までの1224日休業したから,平成15年賃金センサスによる女性学歴計全年齢の平均賃金349万0300円」をもとに算定すると,休業損害は次のとおり1170万3888円となる。
3490300÷365=9562,9562×1224=11703888

【休業損害に関する原告の主張の解説】
事故日から症状固定の診断書が出た日までの間を全て休業を要した日として,単純に計算したもの,考えられる最高限度額を示した。
原告代理人の立場としては,当然である。
民事訴訟においては,請求した金額を上限としされるからである。

イ 逸失利益803万5753円
症状固定時に原告は31歳の女姓であり,平成19年賃金センサスによる女性学歴計全年齢の平均賃金346万8800円をもとに,後遺障害等級表12級の労働能力喪失率14%とし,労働可能残年数は36年であるからこの間の中間利息をライプニッツ方式で控除すると,逸失利益は次のとおり803万5753円となる。
3468800×0.14×16.547=8035753
【逸失利益に関する原告の主張の解説】
基本収入 専業主婦には,現実には,所得がないが,賃金センサスによる女性学歴計全年齢の平均賃金を算定の基本とした。
これは,多くの判例で認められる数値である。

ウ 慰謝料363万円
通院慰謝料は73万円,後遺症慰謝料は290万円が相当である。
【慰謝料に関する原告の主張の解説】
通院慰謝料は,通院日が疎らな場合には,3.5倍するのが通例である。
本件では,実通院日数25日
これの3.5倍は,75日である。
約3か月として,3か月の通院日数に相当する慰謝料を赤本から求めると,73万円となる。
後遺症慰謝料は,赤本の12級を参考とした。290万円である。

エ 弁護士費用207万3490円
【弁護士費用に関する原告の主張の解説】
全損害の10%である。

(被告の主張)

ア 休業損害について
原告は,左上肢の安静が必要であったとするが,装具は1日か2日で外してしまっと供述しており,また痛みがあったので受診していたとするが,投薬があったのは平成15年11月だけであり,株式会社ベルシステム24での1か月のみ休業があったとみるべきである。症状固定も,平成15年12月以降は積極的な治療は行われていないし,鎖骨骨折は通常6か月で症状固定するといわれているから,平成16年6月21日には症状固定したとみるべきである。

イ 逸失利益について
上記アのような治療の経過からして原告に特段の痛みはなかったものと考えられ,結局後遺症は醜状障害のみであるから,逸失利益はないものとすべきである。

ウ エは争う。

争点に対する裁判所の判断
(1)休業損害346万6393円
甲1,乙1,2,5,6,原告本人(甲10を含む,以下同じ)によれば,次のとおり認められる。
本件事故当時,原告は28歳で,派遣社員として株式会社○○で電話オペレーターとして稼働しており,病気のため介護の必要な実母と奈良市で同居していたが,本件事故後は保存的療法となり,クラビクルバンドで固定していたが,左肩等の痛みのため仕事ができず,派遣会社から求められて退職した。原告は,本件事故前から夫と婚約しており,体調が戻るのを待って婚姻しようとしていたところ,妊娠したため,平成16年7月7日に婚姻届け出をしたが,同年12月ころまでは実母とともに生活していた。
上記妊娠のため,同年4月19日を最後にX線撮影はできなくなったが,同年6月に十分な骨癒合は得られていなかった。同年12月ころから夫とともに○○市で生活するようになり,専業主婦となったが,平成17年1月12日に長男を出産し,奈良市の実母方へ通うなどしていたため,同年7月に伊熊整形外科へ通院するまで8か月余り通院できなかった。同月2日に「は「骨はOK,変形のみ」と診断され,骨癒合が診断されている。その後の通院は平成18年2月,平成19年3月と間隔が開き,通院回数も多くなく,同月16日の診断で症状固定と診断された。原告は左上肢の固定をしなくなってからも,左肩と腕の痛みを訴え,重い物を持つことができず,布団の上げ下ろしや買い物に夫や義母の手助けを要し,長男出産後は,子供を左手で抱くことができず,授乳も搾乳して与えていた。
上記認定事実によれば,原告は,本件事故後も介護を要する実母とともに生活しており,保存的療法を受けていたことから,家事労働の休業損害が生じており,全く家事労働ができなかったものとは考えられないけれども,平成16年6月にも十分な骨癒合は得られておらず,ど同年7月ころまでは同様の状態が続いたものと推認されることから,本件事故後平成16年7月までの約9か月程度は通常の3分の1程度の家事労働しかできなかったものと認められる。その後平成19年3月16日に症状固定と診断されるまでは,平成18年2月から1年余り通院していないこと,平成17年7月には骨癒合と診断されていることからすると,平成16年8月から平成17年7月までは,妊娠等の影響もあったとはいえ,安静加療の必要があり,通常の2分の1程度の家事労働しかできなかったが,その後の症状固定までの全期間休業の必要があったものとは認められない。
そうすると,平成15年賃金センサスによる女性学歴計全年齢の平均賃金349万0300円をもとに,休業損害を算定すると,次のとおり346万6393円となる。
(3490300÷365×270×2/3)十(3490300÷365×365×1/2)≒3466393(円来満切捨て,以下同じ。)

【判決の解説】
症状固定の診断書が出た日を基準日としていない。
平成16年7月までの約9か月について,約1/3の家事労働しか出来なかったと認定している。
平成16年8月から平成17年7月までは,約1/2の家事労働しかできなかったとしている。
賃金センサスは,事故のあった平成15年のものを用いている。
現在,殆ど賃金に動きがないので,それほど影響はない。
因みに,平成16年以降の女性学歴計全年齢の平均賃金は,次の通りです。
平成16年 350万2200円
平成17年 343万4400円
平成18年 343万2500円
平成19年 346万8800円
平成20年 349万9900円

(2)逸失利益811万0308円
原告の後遺障害は後遺障害等級表12級5号と診断されており,これは,原告が左肩と腕に今でも痛みを感じていること,左鎖骨骨折部の変形治癒という他覚的所見とよく符合している。
被告は,上記後遺症は,醜状障害のみで逸失利益は生じていないと主張するけれども,原告が未だに左肩と腕に痛みを感じてそのために家事育児に支障があること,そのために家事育児に支障がある。労働能力は上記等級相応に喪失したものといえるから,被告の上記主張は理由がない。
ほぼ症状固定と判断される平成17年7月当時29歳であった原告の逸失利益は,平成17年賃金センサスによる女性学歴計全年齢の平均賃金343万4900円をもとに,67歳まで年5分の中間利息をライプニッツ方式で控除すると,次のとおり811万0308円となる。
3434900×0.14×16.8678≒8110308

【判決の解説】
後遺症等級については,自賠責の認定を基準にして,事実認定の上で,採用している。
逸失利益の基本収入の参考とする賃金センサスは,症状固定時の年のものを採用している。

(3)慰謝料335万円
通院慰謝料は,通院日数自体は比較的少ないことから,55万円をもって相当と認める。後遺症慰謝料は280万円をもって相当と認める。

【判決の解説】
通院慰謝料55万円は,およそ1か月の通院に相当するもの
後遺症慰謝料280万円は,大阪基準の12級相当の後遺症慰謝料

(2)過失相殺

(被告の主張)
本件事故は○○が被告車に乗車しようとして運転席側の扉を開けている状態で発生したものであり,原告としては○○が何らかの動きをするであろうことを知り得たのであり,また,○○の体が扉よりも外側に位置しており,その体ないし自転車が接触したと考えられるのに,扉と当たったと原告は供述しており,原告には明らかな前方不注視があった。原告の過失は決して小さいものではなく,20%の過失相殺がされるべきである。

(原告の主張)
本件事故では,被告車の横,原告のわずか2ないし3m前を他の自転車が通過しており,扉の開放を予測させる事情はない。単車との扉開放事故における過失割合は10対90であり,自転車の過失割合を10%減算すると,原告の過失割合は0%となる。

争点に対する裁判所の判断
(1)甲2,原告本人,弁論の全趣旨によれば,本件事故現場は,幅3m程度の片側1車線の両側に幅約1.5rnの歩道がついた直線で駐車禁止の県道であり,南側の歩道にはアーケードが設置されていること,○○は被告車を上記道路の南側,歩道寄りに被告車を停車して運転席側扉を少し開けてそのそばに立っていたこと,原告は自転車で東から西に向けて上記道路の車道上を走行してきたところ,原告は,被告車と○○が立っていることに気付いていたが,2ないし3m前の被告車と中央線との間にある1m程の間隔を自転車が走り抜けたため,これに続いて同じ所を走り抜けようとしたところ,○○が扉を開けたため,これに衝突して,自転車もろともに路上に転倒したことが認めらしる。
(2)前記(1)によれば,○○が後方を確認することなく,運転席扉を開けたことに,本件事故の原因があることは明らかである。
しかしながら,原告は,車道上を走行し,前方に被告車が停止しており運転席扉を少し開けて○○が立っていることに気付いていたのであるから,○○が扉を附けることは予測できたものであり,前方を自転車が通り抜けたからといって,この予見可能性があったことに変わりはなく,全く落ち度がないとけいえない。とはいえ,○○が後方を確認することは,容易でありかつそうすれば原告が近付いていることは簡単に気付けたのであるから,原告の過失割合は5%にとどまる。

【判決の解説】
ほぼ原告の主張がとおった内容でした。
皆さんもドア開け事故には十分に注意して下さい。

(遅延損害金と弁護士費用)
裁判所の判断

上記損害額のほか,本件訴訟の内容,経過等一切の事情を考慮すると,弁護士費用120万円も原告の損害とみてよいからこれを加算すると,原告の残損害額は(11535785十1200000=)1273万578513となる。

4 よって,原告の本件請求は1273万5785円とこれに対する遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるけれども,その余は理由がないから,主文の,とおり判決する。

【判決の解説】
残損害の約1割を弁護士費用として認めています。

遅延損害金についても,事故の日から年5%で認めています。
実務上は,相当ですが,将来の逸失利益については,ライプニッツ係数を用いています。ライプニッツ係数は,複利計算です。
他方,遅延損害金は,単利計算です。
アンバランスだと思うのは,大阪の弁護士だけでしょうか。








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